整理とは、「乱れているものをそろえ、ととのえること。不必要なものを取り除くこと」。整頓とは、「物事をととのった状態にすること」と辞書に書かれている。対して収納とは、「品物をしまいおさめること」。
正直、収納マンもこのことを辞書で引いて初めて知った。そしてこの違いが、現在の「収納」ブームの中で、片付けられない人が多い理由であると考える。
つまり、「収納」と言う場合、モノを入れる行為にスポットが当てられ、収納グッズや収納家具、収納アイディアの優越によって、片付けの良し悪しが左右されることになる。対して、「整理整頓」と言う場合、モノそのものにスポットが当てられる。収納マンが大事と考えるのは、収納ではなく、整理整頓のほうであることは言うまでも無い。
現在では、「収納」と「整理整頓」は同じ言葉として扱われているため、国語的にそれをどうこう言うつもりは全く無いが、賢明な読者は、例えば収納の本や雑誌を手に取るとき、「収納」のことを記したものであるか、「整理整頓」のものであるか、判断して手に取っていただきたいと思う。
収納格言(41~50)
なぜ片付かないか、片づけるとどんないいことがあるかが分かる収納格言。
「収納のコツ」の何たるかが会得できるかもしれません。
第四十二条 「家はハード、収納はソフト」
今パソコンでこの文章をご覧のことと思いますが、それはパソコンというハード、インターネット閲覧ソフトというソフトがあって、はじめて出来ることですよね?パソコン本体だけでは何も出来ません。
同じように、収納に関しても、家や家具、収納グッズも、収納の考え方というソフトがあって、はじめてうまく機能する、要は、うまく収納できるわけです。
ですから、テレビでやっているリフォーム番組のように、家を改良したところで、収納の考え方が出来ていないと、いつまでたっても片付きません。「狭いから片付かない」「収納スペースが狭いから・・・」と思っている人は、まず収納についてキッチリ学んだほうが良いですね。
そういうわけで、私が普段のサービスで見積りに出掛けると、立派な家はお持ちなのに、いざソフト(=片付けのアドバイス)にお金を払うとなると、すごく抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、私のアドバイスはともかく、ある程度、時間やお金をかけて収納のコツを学ぶのは重要なことだと思います。
第四十三条 「デッドスペースとは?」
デッドスペースとは、死んだ場所=無駄になっている空きスペースのことです。これに似た言葉に、「死蔵品」という言葉があります。
よく、「デッドスペースを有効活用するのが収納のコツ」であるように言われることが多いのですが、これは根本的に間違っています。収納の基本は、あくまで「分ける」こと。デッドスペースにモノを詰め込んでも、根本的な解決は得られません。
それよりも重要なのは、いかに死蔵品を減らすか、もしくは、使い勝手の悪い場所に収めるかです。デッドスペースの活用を考える前に、死蔵品になっているモノが本当に必要なモノかどうか、判断しましょう。
第四十四条 「犬も歩けば収納が分かる」
「犬も歩けば棒に当たる」とは、物事をすると災難に会うこともある、続けていれば幸運に巡り会うこともある、という意味ですが、ここでは両方の意味を加えて、さらに「生活動線」「作業動線」の重要性についても意味を込めたいと思います。
まず本来の「犬も歩けば棒に当たる」ですが、収納に関しては、やれば失敗をすることもある、けれど失敗無くして上達や発見は無いということが言えると思います。あと、片付けをしていると、探し物が見つかったり、お金や商品券が出てきたりすることもしばしば、こんな幸運もあるのですね。
そして、ここで言いたい「生活動線」「作業動線」の意味とは、いつも自分が生活する上でどういう行動をしているのか思い出しながら実際に家の中を歩いてみてもらいたいということです。例えば、朝起きてから身支度する手順や、玄関から入ってどう行動するかなどですね。そうすると、どこが使い勝手が悪いのか、収納レイアウトの良し悪しが分かるはずです。
第四十五条 「収納も時は金なり」
世界の基軸通貨である米ドル紙幣の親玉、ベンジャミンフランクリン(=日本の福沢諭吉ですね)の言葉"time is
money"(時は金なり)は、収納の世界でも当てはまります。
例えば専業主婦の場合、収入はありませんが、家事も立派な労働です。それに加えて、育児もしないといけないし、習い事もあるし、みのもんたも見ないといけない(笑)。だから専業主婦といっても暇ではないはずです。ですから、収納を趣味と捉える人は別として、「収納は面倒くさい」「出来ればやりたくない」と思っている人は、これを労働=大切な時間を割くものと捉えなければなりません。
だから、収納は出来るだけ時間をかけない=手間を掛けないように心掛けるべきなのです。巷では、「100円グッズで収納」とか「隙間無く効率収納」とか言われてますが、100円グッズを組み合わせたり加工したり、1cmの隙間を活用するためにホームセンターで材料を揃えて自分で収納グッズを作ったりするのが、本当に効率的かどうか、自分に合っているかどうか、しっかり判断しなくてはなりません。
第四十六条 「収納は手段に過ぎない」
何事も目的を達成するには手段を選ぶ必要があります。「家を快適にしたい」「安全に暮らしたい」「時間や労力、場所や管理コストを効率よくしたい」・・・・・そんなときの手段として選ぶものの一つが収納です。決して、収納そのものは目的ではありません。
ですから、収納をするときは、目的をハッキリさせる。そして、目的に相反する方法で収納してはいけないということになります。例えば、一時的に最低限の時間を必要とするのは仕方ないですが、使い勝手を良くするのが目的なのに、見栄えを良くすることに気を取られてはいけないということですね。
第四十七条 「収納に魔法は無い」
テレビや雑誌で収納の特集を見ると、まるで魔法のように見えますよね。ご丁寧に「魔法の収納法」とか「マジック収納術」とかいうようなタイトルを付けているのもありますが、超能力者で無い限り、それは魔法ではありません。逆に言うと、超能力者にしか出来ない収納術なんて、困るでしょ?ほとんど誰にも出来ない収納術(笑)。
魔法ではないとすると、いわゆる手品です。手品にはタネも仕掛けも・・・・・あります。テレビでは「あっ」と言う間に片付くわけですが、実際には朝から夜遅くまで非常に地味な作業があります。また、画面に移っていない場所は、全然片付いてなかったりします。
そういう見方でテレビや雑誌を見ると、なかなか面白いですよ。
第四十八条 「収納は消去法でする」
収納は頭でするものですが、イメージを膨らませ過ぎたり、選択肢を多くし過ぎると、いつまでたっても頭の整理が出来ません。ですから片付かない原因、片付けようとしているモノの特性から、消去法で対策を考えるのがオススメです。
例えば、本を片付ける場合。本は重量物ですから、あまり粗末な収納グッズでは片付けることが出来ません。また、奥行のある棚や棚板の高さが調整できない棚は最適ではありません。にもかかわらず予算が少ない場合は、見栄えの良い幅の広い本棚を買うより、幅の狭いカラーボックスのちょっとマシな感じの物をいくつか購入するほうが良い、ということになります。この場合、予算が無いから、見栄えは妥協する、ということになりますね。
この例は非常にシンプルな例ですが、頭を整理するときには、消去法で考えるのはすごく考えがまとまりやすいですね。
第四十九条 「収納は動機付けが大切」
片付けって、面倒臭くないですか?少なくとも、私はそう思います。この面倒臭いこと、面白くないことを楽しんでやるというのは、結構無理があります。
そんなときに大切なのが動機付け。「お客さんが来るから」とか「子供が新学期に入るから」とか「衣替えの季節だから」とか、やらなくてはいけない理由を自分で決めて、片付けなくてはなりません。
ここで注意してもらいたいのは、思いつきでやるのは構わないのですが、あまり一気に片付けようとしてしまわないこと。必ず、自由に使える時間がどれくらいあるのか考えて、その範囲で出来る場所を片付けるようにしましょう。
第五十条 「収納グッズはバランスで選べ」
収納グッズには、3つの要素があります。すなわち、機能性、見栄え、コストの3つです。機能性が高くて見栄えも良いものを選ぶと、必然的にコストは上がります。コストが安ければ、機能性や見栄えは下がりますよね。
収納の目的は「楽をすること」「得をすること」ですから、コストの問題は必ず付きまといます。機能性や見栄えは、その設置する場所に合わせて必要最小限のレベルにとどめることで、さらに得をすることが出来るのです。